【移動の最先端】『MaaS モビリティ革命 ~モビリティ革命の先にある全企業のゲームチェンジ~』
本日ご紹介する一冊は
『MaaS モビリティ革命 ~モビリティ革命の先にある全企業のゲームチェンジ~』
です。2018年10月にトヨタ自動車とソフトバンクが新しいモビリティサービスの構築に向けた戦略的提携として設立した新会社「モネ・テクノロジー」の発表の際には両社長がたびたび「MaaS」というフレーズを使っていましたね。
本書はMaaSの基本的な説明からMaaSサービスに派生する新たなビジネスにまで言及されている300ページ越えの濃い内容となっておりますのでなるべく分かりやすく、端的にご紹介したいと思います。
それでは以下の4つの項目に分けて説明したいと思います。
Ⅰ.MaaSとは
Ⅱ.MaaSと日本
Ⅲ.モビリティ事業とMaaS
Ⅳ.他産業とMaaS
Ⅰ.MaaSとは
MaaSとはMobility as a Sreviceの略であり言葉の通り移動をサービスとして提供しようという考えです。従来であれば移動手段といえば公共交通機関を除いては自動車や自転車を所有することで手に入れる、すなわちモノを通じて移動を手に入れるものでしたがMaaSでは移動をモノではなくサービスとして提供しようという考えになります。
MaaSの特徴としては大きく2つ挙げられます。
①自動車を保有しなくてもよくなる
MaaSという概念ははもととも2014年にフィンランドのアールト大学のソンジャ・ヘイッキラ氏の論文「Mobility as a Service -A proposal for Action for the Pablic Administration」で初めて紹介されたものであり、この論文での解決したい課題がマイカー依存なのです。フィンランドでは市民のマイカー依存による渋滞、駐車場不足、環境問題が挙げられており、この問題に対してマイカーがなくても移動が困らない社会を実現することをヘイッキラ氏はMaaSという考えで提案しています。MaaSではマイカーに変わる移動手段として電車、バス、公共交通機関に加えてタクシー、カーシェアリングサービス、オンデマンド型の乗り合いバス、といった様々な交通サービスを移動ニーズに合わせて最適な組み合わせをつくり、1つのパッケージとして提供します。
②様々な交通手段が統合される
上記でも少し触れましたがMaaSでは様々な交通サービスを統合し、1つのモビリティサービスとして利用者の移動を支援します。1つのモビリティサービスとは、例えばA地点からB地点まで移動したい場合、MaaSサービスを提供するアプリを用いて経路を検索し、それぞれの経路で用いられる交通手段を一括で予約、決済するものになります。
フィンランドではすでに政府主導のMaaSサービス「Whim」というものがあり、一つのアプリですべての交通機関の決済を一括で行うことができます。またWhim Unlimitedというプランでは月額499€(1€≒130円)で市内の公共交通機関、レンタカー、カーシェア、タクシー(5km以内)が乗り放題になります。車を所有してしまうと全く乗らなくても維持費で月300€はかかるのでマイカーを手放しこちらのサービスに移行する方も多く出てきたそうです。
Ⅱ.MaaSと日本
フィンランドや欧米諸国のように日本では未だMaaSサービスの普及はしていませんがここではMaaSサービスの日本におけるインパクトについて、地方と東京や大阪といった大都市で分けて説明します。
地方ではマイカー依存社会(移動手段の4~6割がマイカー)でありこれは公共交通機関の衰退、車の運転が難しくなる高齢者の移動手段がなくなる、といった問題があります。そういった地方ではオンデマンド型の配車サービスを普及することで徐々にマイカー依存社会から脱却していきます。
一方、大都市ではすでに公共交通機関の発達もありマイカー依存度は高くありませんが、いまだに各公共交通機関やタクシーなどのサービスは独立しています。そこですべての交通機関を自由に使いこなせるような経路検索、予約、決済が一括でできるサービスが求められます。また乗り継ぎ時には丁寧な経路案内、トラブル発生時には代替手段への乗り換えができるような仕組みがあると混雑トラブルにも対応できます。
またMaaSサービスを提供することにより、MaaSのオペレーターはユーザーの移動というビッグデータを手に入れることができるので行政と連携して街づくりに生かすことができます。具体的には事故が起こりやすい場所、人が来ない場所の把握などをし、全体最適を見据えたまちづくりを行うことができます。
また日本としてMaaS戦略に乗り出す優位性もあります。
個人のビッグデータではすでにGAFAといった企業に覇権を握られているのに対して、交通機関といった産業データではまだどこの企業にもアクセスはされておらず言わばモビリティサービスに関しては未だ日本は鎖国状態なのです。今だからこそ産業データでのプラットフォームを築くことができるのです。
Ⅲ.モビリティ事業とMaaS
それではMaaSが普及する時代において、モビリティ事業をに担う企業はどのような変化が求められるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
自動車メーカー
所有→利用への変化にともなう従来のビジネスモデルの変化への対応することが求められます。販売しておしまいではなく販売後のアフターケアが大事になるため、アフターケアを可能にするために部品のIoT化することで各部品の消耗状況の把握等行い車のメンテナンス業務での収益を伸ばします
自動車ディーラー
車両のメンテナンスを行う地域拠点としてMaaSサービスの運用を支えます。
また車室空間のユーザーのニーズの変化をとらえるマーケティングの最先端の場所にもなります。
鉄道
MaaSサービスにより未来の移動ニーズの変化をとらえることができるので、それに合わして時間帯などにより料金を上下させるようなシステムの構築が可能になります。
バス
鉄道の遅れや混雑の際の受け皿としてMaaSを支えます。またMaaSのビッグデータの活用により経路の最適化なども可能になります。
タクシー
MaaSにより各交通機関とのデータが共有できる(どこの駅から人が多くの人が降りてくるか等)ため、稼働率の向上につなげます。
Ⅳ.他産業とMaaS
MaaSが普及するとその影響は上述した従来のモビリティ事業だけでなく一見すると関係のないような産業にもビジネスチャンスは産まれます。本書では様々な業界とMaaSとの関係性が述べられていましたので興味深いところをピックアップして紹介したいと思います。
・不動産×MaaS
MaaSによる移動の利便性の向上のため、地方や郊外であっても地価が高騰する可能性があります。また賃貸住宅の物件にMaaSのパッケージ付けるといったサービス始まるかもしれません。
・保険×MaaS
保険でが以下のような商品が誕生するかもしれません。
●MaaSオペレーター向け商品
定額サービス提供時、ユーザーが予想以上に交通機関を利用して赤字の際や貸出のモビリティサービスが盗難にあった際の保険サービス
●事業者向け商品
自動運転の事故リスク、ドライバー保険
本著のまとめは以上になります。
MaaSのコンセプトからそれがどのように社会に波及していくのかという部分が少しでも伝われば幸いです。
ご精読ありがとうございました。
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